フルマラソンに初めて申し込んだ人から、よく同じ相談を受けます。「とりあえず走れば完走できますよね?」というものです。答えは、半分はイエスで半分はノーです。練習量が足りていても、当日の段取りを知らないせいで実力を出し切れない人は、思っているより多いんです。ここでは申し込み前の確認から当日のつまずきまで、順番に整理していきます。
申し込む前に、確認しておきたいこと
結論から言うと、距離と制限時間、それから自分がレースまでに確保できる練習期間を照らし合わせてから申し込むことが、失敗しないための第一歩です。勢いで申し込んでしまうと、あとで後悔しがちです。
大会ごとに制限時間は大きく違います。フルマラソンなら6時間台の大会もあれば、7時間近くまで許容している大会もあります。さらに厄介なのが「関門タイム」です。コースの途中、例えば30km地点や35km地点に通過締切が設定されていて、そこに間に合わないと強制的にコースから外されてしまいます。ゴールの制限時間だけ見て安心していると、途中の関門で足止めされるケースが実際にあります。
想像してみてください。30km地点まで順調に走ってきたのに、関門まであと3分というところで係員に止められる。悔しいですよね。練習時のペースと、関門ごとの通過目安タイムを事前に照らし合わせておけば、こういう事態は避けられます。
ここは迷うところですが、初めての大会なら制限時間にかなり余裕があるものを選ぶのが無難です。ハーフマラソンやトレイルランニングは大会ごとに関門の厳しさがかなり異なるので、距離だけで判断しないほうがいいです。公式サイトのコースマップに関門時刻が書かれていることが多いので、そこは必ず目を通しておきましょう。
当日までに揃えておきたい持ち物
結論を言うと、持ち物は「当日身につけるもの」と「荷物預けに入れるもの」の2つに分けて準備すると迷いません。前日にまとめてバタバタすると、忘れ物が出やすくなります。
多くの大会では、受付でゼッケンと計測チップを受け取り、荷物をクロークに預けてからスタートラインに向かうという流れになります。この流れを知らないまま当日を迎えると、どこで何をすればいいのか分からず時間を無駄にしてしまいます。
- ゼッケン(事前に自宅へ郵送される大会も多い)
- 計測チップまたは計測用タグ
- レース中に着る服と靴
- エネルギージェルや塩分タブレット
- スタート前に羽織る防寒着(不要になったら荷物袋へ)
- 着替えとタオル(ゴール後用)
例えば冬の大会だと、スタート前の待機時間が30分以上あることも珍しくありません。その間、薄着で震えながら待つ人をよく見かけます。使い古したウィンドブレーカーや100均のポンチョを羽織っておいて、スタート直前に脱いで荷物袋に放り込む、というやり方をしている人が多いです。
計測方式は大会によって違います。靴紐に取り付けるタイプもあれば、ゼッケンに埋め込まれているタイプもあります。自分で取り付ける必要がある大会でそれを知らずに当日慌てる人も見かけるので、事前の案内メールやパンフレットには必ず目を通しておいてください。
前日にやっておくべきこと
前日の準備は、当日の朝を楽にするためにあります。朝になってから探し物をする時間は、想像以上にメンタルを削ります。
やることは単純です。荷物を一通りまとめ、ゼッケンを服に安全ピンで留めておく。靴紐の結び方を確認する。アラームを2つ以上セットする。これだけで、当日の朝の慌ただしさはかなり減ります。食事については、炭水化物をやや多めにとっておくのが定番ですが、普段食べ慣れないものを急に試すのはおすすめしません。胃腸の調子を崩すと元も子もないからです。
具体的な場面を挙げると、開催地が自宅から遠い大会に参加する人は、前泊するかどうかで悩むことが多いです。始発電車で向かえば間に合う距離だとしても、当日の電車遅延や大会会場周辺の渋滞を考えると、前泊したほうが精神的に楽な場合がほとんどです。実際、スタート30分前に会場に駆け込んで、トイレにも行けないまま号砲を迎えた、という話はよく聞きます。
例外として、地元開催で会場まで徒歩圏という人は、前日の準備もそこまで気負う必要はありません。それでも、ゼッケンを留め忘れて家を出てしまう人は一定数いるので、玄関を出る前に一度チェックリストを見返す習慣はつけておいて損はないです。
当日の流れ、受付からスタートまで
当日の流れを一度頭の中でシミュレーションしておくと、現地での迷いがぐっと減ります。大きな流れは、受付、荷物預け、トイレ、整列、スタートというのが基本です。
大規模な大会ほど、この一つひとつに時間がかかります。受付だけで20分並ぶこともありますし、スタート直前のトイレは長蛇の列になります。仮設トイレが100基近く並んでいても、スタート30分前には全部埋まっている、という光景は都市型マラソンではよくある話です。
スタートブロックは、申告タイムによって分けられていることが多いです。A・B・Cのようにブロックが分かれていて、自分のブロックより前に並んでしまうと注意されることがあります。逆に後ろのブロックに並ぶと、スタートラインを通過するまでに数分かかり、グロスタイム(号砲からの時間)とネットタイム(自分がスタートラインを通過してからの時間)に差が出ます。タイムを気にする人は、ここを理解しておくと混乱しません。
給水所の使い方も、知っているかどうかで走りの質が変わります。コップを取ったらすぐに飲もうとせず、少し減速してから飲む人が多いです。満員電車のような混雑の中、立ち止まって飲もうとすると後ろから来るランナーとぶつかる危険があります。給水所の終盤のほうに進んでから減速する、という小さなコツを知っているだけで、転倒のリスクはかなり下がります。
多くの人がつまずくポイント
結論から言えば、つまずきの多くはスタート直後と給水所、それからゴール後に集中しています。レース中盤よりも、むしろ最初と最後に落とし穴があるんです。
スタート直後は、どれだけ練習を積んだ人でも周りのペースに引っ張られがちです。周囲が速く感じて、ついついオーバーペースで入ってしまう。これが後半の失速、いわゆる「35km の壁」につながるケースは本当に多いです。自分の心拍数や呼吸の感覚を基準にして、周りのスピードに惑わされないことが大事になってきます。
もうひとつ多いのが、トイレのタイミングです。スタート前に済ませたつもりでも、走り始めて1時間ほどで尿意を感じる人は少なくありません。コース上に仮設トイレはありますが、人気の大会だと行列ができていて、数分のロスは覚悟する必要があります。ここは体質によるところも大きいので、一概に「こうすれば防げる」とは言い切れない部分です。
ゴール後も油断できません。ゴールした直後は達成感で気が緩みますが、急に立ち止まると足がつったり、めまいを起こしたりする人がいます。ゴールエリアでは歩き続けるように案内されることが多いですが、これには理由があるわけです。
例外として、トレイルランニングやウルトラマラソンのような長時間レースでは、ここで挙げた内容とは違う注意点も出てきます。補給食の種類や夜間走行の装備など、ロード系の大会とは別の準備が必要になるので、参加する大会の性質に合わせて情報を集め直すのが安全です。

